スウィート テン ラブレター

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あなたにどうしても伝えたいことがある。

 

あなたと結婚して、はや10年。

子ども達も、7歳と1歳になった。

 

家族を養うために、

嫌なこと、

投げ出したいことがたくさんあったであろうに、

弱音も吐かず、

社会の荒波の中で闘い続けてきてくれて、

本当にどうもありがとう。

 

そんなあなたに、

今だからこそ伝えたいことがある。

 

いつも仕事で帰りが遅く、朝が早いあなた。

子ども達が寝てから帰宅し、

子ども達が寝ている間に出勤する。

そんな毎日。

 

そんなあなたが、昨日はめずらしく早い時間に帰ってきた。

子ども達はもう夢の中だったけれど、

私はそれでも嬉しかった。

久しぶりにゆっくり話せる時間が持てる。

ただただそれが嬉しかった。

 

「保育園で初めてオマルでオシッコできたよ!」

「苦手な国語のテストで100点とれたよ!」

あなたが知らない子ども達の成長や頑張りをたくさん伝えたかった。

 

「好き嫌いが多くて全然食べない…」

「何度言っても、同じことの繰り返しで、毎日喧嘩ばっかり…」

日々ぶち当たる子育ての悩みを、少しでも共有したかった。

 

あなたが早く帰ってきた日くらい、父親としてのあなたとゆっくり話がしたかった。

 

でも、

部屋着に着替えたあなたが開口一番発した言葉は、

私の予期せぬものだった。

 

「どうして〇〇(私)の皮下脂肪は落ちないんやろうな。さっき、前を歩いていた女の人がすごい細くて、〇〇が痩せない原因は何やろうと思いながら帰ってきた。」

 

あまりに意表をつくあなたの言葉に、

私が呆然としていたことに、あなたは気づいた?

気づかなかったでしょうね。

だって、あなたはいたって普通の素振りで話し続けたもの。

 

「子どもを産んでも痩せてる人もいるのに、なんで〇〇は体重が減らないんやろうな」

 

心の中に、冷たい突風が吹き込んだ。

まさしくあれは、

「愛情がサァーっと覚めていく感覚」だったに違いない。

 

えぇ、たしかに。

あなたに言われなくても、きちんと自覚しています。

年々肥ゆる一方の体型を。

 

でも、

でもね、

開口一番あなたに、そんなことを言われたくなかった。

 

あなたが帰ってきたとき、私が何をしていたか覚えてる?

私はパソコンに向かいながら、持ち帰り仕事をしていた。

母としての役目を終え、

ようやく訪れた自分の時間。

たまった仕事に打ち込める貴重な時間。

 

ねぇ、あなた。

あなたは知らないだろうけれど、

私の体型について語りながら、

あなたが気持ちよさそうに寝転んだ絨毯は、

ついさっきまで、至るところにおもちゃが散乱していた。

 

毎日、綺麗に片づけられた部屋に帰宅するあなたには、

今の静かで穏やかな時間が訪れるまでの、

嵐のような慌ただしさを、

想像することすらできないでしょう。

 

朝、あなたが身支度をしている間に、

私は朝食の支度をする。

子ども達がご飯を食べている間に、私は夜ご飯の下ごしらえをする。

子ども達の食べこぼしを掃除しながら、素早く自分の朝ご飯を口にかきこむ。

「抱っこ」とせがむ娘をあやしながら、急いで自分の身支度を済ませる。

 

息つく暇なく、娘を保育園に送り届ける。

雨の日も、凍てつく寒さの日も、紫外線が降り注ぐ暑い日も、

ただひたすら自転車で保育園を目指す。

 

雨の日に、

布団が濡れないように気をもむ大変さを、

あなたは知らないでしょう。

 

仕事中に、

何度となくかかってくる、

「熱なので迎えに来てください」コールに頭を悩ます大変さを、

あなたは知らないでしょう。

 

入園して一か月たった今も、

朝お別れするときに目に涙をいっぱいためる我が子の姿を、

あなたは知らないでしょう。

 

帰宅後、

すぐにお風呂をため、洗濯機をまわし、洗濯物を取り込む。

できたおかずから子ども達に食べさせながら、ダッシュで残りの料理を仕上げる。

好き嫌いの多い娘にあれこれ手を焼きながら、

ようやく自分の口に運んだご飯は、いつもすっかり冷え切っている。

 

夕食後、

「遊んで」と、足にまとわりついて離れない娘をあやしながら、

食べこぼしを片付け、食器を洗い、掃除機をかける。

一人ならなんてことない家事でも、

幼子がいるだけで、途方もないほど時間がかかる。

 

子ども達をお風呂に入れ、

仕上げ磨きをして、

一足先に娘を寝かしつける。

 

 

絵本を数冊読んだあと、

電気を消して布団に寝転び、

隣で寝たふりすること約30分。

娘はようやく深い眠りにつく。

ちょうどそのタイミングで、

宿題を終え、

好きなテレビアニメを見終えた息子が私の布団にもぐりこむ。

 

反抗期で、

偉そうな物言いで、

気に入らないことには大声で言い返してくる息子。

ここ最近、毎日息子と衝突することばかり。

「子どもと同じ土俵に立ってはいけない」と、

頭の赤では理解していても、

ついその場になると、すぐに頭に血が上ってしまい、

売り言葉に買い言葉で、言い争いになってしまう。

その後ふと我に返り、

自己嫌悪と、

ただただむなしい疲労感に包まれる。

 

そんな息子も、夜はまだ私と一緒に寝たがる。

私の腕にくっついてくる息子は、

7歳の、まだまだ幼い男の子の姿。

「余裕のない、ひどい母親でごめんね」と心の中で謝りながら、

「世界で一番大好きだよ」とささやいて、

息子をギュッと抱きしめる。

 

二人がすっかり寝入った後、

スヤスヤと、

気持ちよさそうに眠る二人の顔を眺めながら、

ようやく、心に張りつめていた糸がホッと緩む。

 

押し寄せてくる眠気に何とか耐え、

再びリビングへと舞い戻る。

洗濯物をたたみ、

まわしておいた洗濯物を干す。

散らかった部屋を片付け、

炊飯器のタイマーをセットする。

 

ふぅ。

ようやく、長い一日が終わった。

 

熱い緑茶をすすりながら、

自分で自分の労をねぎらう。

 

これが私の毎日。

子どもが生まれて以来ずっと、

あなたの手を借りずに、

何とか一人でできる方法を模索しながら積み上げてきた日々。

休むことなく、ただひたすら繰り返してきた日々。

 

一家の大黒柱として、

家族を守る父親として、

あなたの肩にのしかかる責任の大きさも、

プレッシャーも、

相当なものだと私も理解している。

だからこそ、

夫として、

父親として、

「もっと関わってほしい」と望む私の思いは、

自分の胸の内にしまってきた。

 

誰にも感謝されないけれど、

誰にも褒めてもらえないけれど、

誰かがやらなければ家庭生活が破綻するであろう家事の数々を、

ただただ夢中でこなしてきた。

 

子どもが生まれる前は、

夕食後にウォーキングしたり、

筋トレしたり、

休日にはジムで汗をたくさん流した。

 

お風呂だって、

毎日トリートメントをして、

半身浴で汗をかいて、

高価な化粧品で入念なケアをした。

 

今は、

そんな時間も、

そんなお金もない。

 

ようやく訪れた貴重な「自分タイム」を、

「美への追及タイム」と化すだけの気力は、

今の私には到底持てない。

 

 

ねぇあなた。

あなたに伝えたいことがある。

 

ほら、あなたって、サプライズをするのが好きだったでしょう。

あなたの粋なプレゼントの数々に、

私は幾度もトキメキをもらった。

 

ここ数年は、

そんな機会もめっきりなくなってしまったけれど

あなたが私を、昔と変わらず愛してくれているのなら、

また私にサプライズを届けてほしい。

 

私の憧れるサプライズはね、

 

朝起きると、

リビングに見慣れない箱がひとつ。

 

中を開けると、

そこには色鮮やかなオシャレなワンピースが!

 

そして、一枚のメモにこう一言。

「今度、この服を着てデートしよう」

 

こんなサプライズがあったなら、

私はきっとその日から、

「自分タイム」のすべてをエクササイズに捧げるでしょう。

 

女心は単純なのよ。

あなたの言動ひとつで、

私は豚にも、白鳥にもなる。

 

巨大豚にならないように、

普段の言動には、

どうぞお気を付けあそばせ。 

 

 

 

今週のお題「あの人へラブレター」